Civic AI(6-Pack of Care)

Civic AI は、オードリー・タン(Audrey Tang)とキャロライン・エマー(Caroline Emmer、オックスフォード大学AI倫理研究所リサーチディレクター)による研究プロジェクト。「単一の巨大なAIで社会を統治する」のではなく、コミュニティごとにローカルなAIを運用・管理するという設計思想を中核に置く。このローカルAIを Kami(knowledge artefact management intelligence)と呼ぶ。

初めての人向けに言い換えると、「一つの正解AIをみんなに配る」のではなく、「それぞれのコミュニティが、自分たちのケアの基準に沿って小さなAIを育て、期限が来たら手放す」という考え方。dd2030が取り組むブロードリスニングが「声をどう集めて可視化するか」を扱うのに対し、Civic AIは「集めた声をどう意思決定に接続し、結果を話し手へ返し、その健全さをどう測るか」という関係の設計に重心がある。

思想的背景

  • Plurality(多元性): 「社会的差異を超えた協力のための技術」。関係の健全性を重視する立場。オードリー・タンとグレン・ワイルらが体系化した考え方で、dd2030の活動全体の底流にある。
  • ケアの倫理(ジョーン・トロント): ケアを「私たちがこの世界で可能なかぎり良く生きられるよう、世界を維持し、継続させ、修復するために行うあらゆる活動」と定義する。Civic AIはこのケア概念を6つの原則に分解している。

6-Pack of Care(ケアの6原則)

各原則には測定指標が対応する。特徴は「最大化が目的ではなく、コミュニティが定めた閾値を超えていれば十分」とする点。

  1. Attentiveness(注意深さ) — 困っている人のニーズを把握する
  2. Responsibility(責任) — 検証・異議申し立てが可能な約束を形成する
  3. Competence(有能さ) — シャドーモード → カナリアリリース → 一般展開という段階的な実行
  4. Responsiveness(応答性) — ケアが実際に届いたか確認し、届いていなければ修復を試みる
  5. Solidarity(連帯) — 複数のKami間でwin-winを構築する
  6. Symbiosis(共生) — Kamiが永続的な権力にならないよう時間制限を設ける

「ケアは、一人ひとりの内側ではなく、私たちの『あいだ』で測る」という主題は、デジタル民主主義サミット2026の閉会スピーチ「ループを、閉じる」で示された、声が意思決定へ接続され結果が話し手へ返る循環の考え方と接続する。

実践面

  • civic.ai のサイト上の指示に従ってセットアップできる。
  • Kamiはプロンプトベースで自然言語で構築されるため、使用するモデルやプロンプト内容によってKamiの性質が変わる。

dd2030との関係

Civic AI自体はdd2030のプロダクトではなく、オードリー・タンらの海外研究プロジェクト。ただし、デジタル民主主義サミット2026の閉会でタンが提示した「閉じたループ」の議論と地続きであり、dd2030が扱うブロードリスニング・熟議民主主義の「声の循環」を、AIガバナンスの原則として言語化したものと読める。

参照